「とっこ」とは、この地方の言葉で「木の根っこ」のことをいう。その形が、独鈷の形に似ているからと言われている。この物語について記した本が手元にないので、現地の案内板に記述されている由来書をそのまま以下に記す。
「ここは「木のとっこ(根、根っこのこと)」をご本尊とする、子供を守るお地蔵様のお堂です。
むかしむかし、ここ新山久保田に、あるお百姓さんがいました。ある日山へ行き「とっこ」を掘って来て、焚き物小屋の薪の上に積んでおきました。さて、翌日小屋へ行ってみるととっこが地面に落ちています。それでまた薪の上に放り上げておきました。さて、一晩たった翌日もまた地面にとっこが落ちています。お百姓さんは変に思いましたが、今度は囲炉裏の中に入れて焼いてしまいました。ところが翌朝、焼いたはずのそのとっこが、またまた焚き物小屋の中に落ちていたのです。不思議に思ったお百姓さんが行者にみてもらうと、そのとっこにはお地蔵様がのり移っているとのことでした。それ以来、そのとっこを「とっこ地蔵」としてここにお祠りしています。
このとっこ地蔵様は子供の護り神として信仰を集めました。子供が病気になったとき、地蔵様が身に着けている着物などをお借りして子供に着せ、病気が治ったときにはそのお礼参りとして新しい物をお返しする。そんな素朴な信仰です。今までとっこ地蔵様は多くの子供たちを守ってきてくれたことでしょう。そしてきっとこれからも子供たちをお守りしてくれるでしょう。」 |