人間になれない子ども達講演会メモ 
現代文明と子どもの発達
12.5.24

期日:平成11年 5月26日(水)
場所:伊那小学校 講堂
NHK長野放送局長  清川 輝基(てるもと)先生
    中部教員会
 

第2回目
期日:平成12年 5月24日(水)
場所:伊那文化会館 大ホール
    上伊那郡定期総集会
 
 清川 輝基氏…現在 NHK放送文化研究所・専門委員
           NPO子ども劇場全国センター・代表委員
 
   日本は昨年(平成10年)5月27日・28日  国連により「発達上の障害」を勧告された。
 
 43項目の23番目。日本の子どもたちは過度の競争。ストレスにさらされている。
 発達上の障害にさらされている。
日本はどこで変わったのか。
○19世紀からの教育スタイルを変えてない唯一の国は日本である。(130年間)
 
○人間とは…。直立二歩行。体の能力は後天的に獲得されたものである。
 
砂利道・でこぼこ道等がなくなり、舗装された平らな道が多い。
 →足の獲得レベルが低くなってきている。
 
このように、人間の生きる空間が変化してきている。
便利さが人間の体の機能レベルを下げている。
 
プールで泳ぎはできても、子どもは人間として育たない。
 
これから人間になろうとしている子どもたちにとって、現在の環境はあまりにも残酷である。
 
大人たち自身の自らの快適な生活の追求のため、子どもたちを商売のターゲットにしてきた。そのつけが、今大人たちに返されている。
 
 登り棒…足を巻ながらのぼっていく子ども。
 ころんで顔や頭を打つ。さらに、内臓破裂で死亡した例もある。
 
 自分の命すら守れない子どもたち。 →足の働きが経験できないまま大きくなってきている。 足の機能獲得ができにくい状況になってきている。(1960年代以降)
 ・腰痛を訴える子ども達。…背筋力の低下。

子どもたちを取り巻く文化環境の変化
 
 鉄腕アトム等テレビアニメ … 圧倒的に子どもたちを虜にしてきている。
 テレビ・テレビゲーム・ビデオ…1日平均6時間見る子どもたち。
 
光と音。強烈な刺激を幼児期から受ける。 全国で、ボケモンのテレビで、700人の子どもたちが気を失った。
 
アニメの編集社たちいわく…いかに子どもたちを引きつけるか、そのことしか考えてこなかった。→自分たちの後継ぎを金儲けのターゲットにした日本人
 
(小児科医情報 新潟大学 小林さん) ヨーロッパではテレビを見ていて死んだ子がい る。
 テレビを全く、野放しにしているのは日本だけ。
アメリカ合衆国の例…4/22〜28 テレビ消そう週間
クリントン大統領がラジオ演説→アメリカの子どもたちは、18才になるまでに4万回の殺人を経験して育つ。
 
ヨーロッパに行き、夏に冷房が入っているのは、日本とアメリカ資本のホテルや店舗のみ。
 
友達の作れない子の多くは→テレビ・ゲーム付けが多い。(相関関係あり)
 
テレビ・ゲーム・ビデオから受ける影響    生理的な影響
 
 
                      精神的な影響
                      ・現実体験→非現実体験 うつしかえる
               (ヴァーチャルリアリティの肥大化と現実体験の欠落)
 緊張と弛緩(しかん) が大切。鬼ごっこやかくれんぼの経験。
 
現在の子…身長は伸びた。腹筋・背筋が弱い。
      走り幅跳びなど自分の体をコントロールする能力が落ちてきた。
 
     ※目をつぶって、人差し指どうしを合わせられるか。
      あわせられなかったら、機能獲得が経験されないまま大人になってしまった。
 
○家の手伝いをする経験を。○鉛筆を削る経験。等  自分の体を思うように動かす経験。
 
※身体異常(足、筋肉、防御反射、身体操作、骨、体温、大脳)
※人格発達のゆがみ(不登校12万8000人…平成10年度、自殺、家庭内暴力<耐性・自主性>、リンチ障害、殺人<生命・身体感覚>、コミュニケーション能力)
 

自然(物理的)環境の変化
 
○子供たちの遊びの文化が、今地域社会から消えつつある。…高度成長は子どもの居場所 (子供たちを人間にする場)を奪う歴史。
 
○子供たちを地域で育てていくことが必要。 学校・家庭以外で子供たちの居場所を。
 地域で責任を持つ。
○厚生省…子育て支援基金(900億円予算に盛り込む)
     全国1000カ所に子供センターを作る予定。
 
○1979年以降 子供たちの異常は始まっている。
 
○自分たちの子孫が健全に育つかどうか、最大の関心を持つべきである。

社会環境の変化
 

・地域の変質…子どもの役割はどこへ? 
・家庭・家族の変質…生産の単位から消費の単位へ。
                   大人と子ども同格化。
         ・学校の変質…点数主義(単一価値観)の支配
<世界の教育改革>
 
(スウェーデン)30年前より実践  
○学校は学ぶ人と助ける人との関係で成り立っている
○成績評価なし 希望すればすべての大学に入れる。
○授業料なし。受験して授業料を払っている日本は特殊である。
○高校を出ていなくても、7年間の労働体験があれば、大学に入学することができる。
○学校運営評議会が学校を運営。先生の助けか違うまいか下手か。子供たちが評価。
○選択教科 5人の希望者があれば、学校で担当の先生を用意しなければならない。
○重度障害児も入れる。ヘルパーが必ずつく。
○国家財政の四分の一が教育費である。
○低学年の小屋障害を持った子供が先に食堂で食事をとる。その後は、高学年。
※自分の人生設計に応じて学校や教科を選択していく。成績評価は一切やらない。
(アメリカ合衆国)
○チャータースクール(民間グループの経営する学校)
 授業を行う場所は、スーパーの倉庫であったり、銀行の空いている会議室であったり、…。
○州等で財政補助。免状授与。成果が上がらなければ、免状取り下げ。
(イギリス)
○コンプリヘンシブスクール
○私立学校→公立学校
○ドラマ・芝居の重視。学びながら作り上げていくことを大切にする。
 
 
日本の学校
 
○畏敬の念はもうない。
○場の生活の変化。
○子供たちが変わった。
○学級崩壊…先生個人に責任を押しつけるのは過酷である。
 
家庭
○かつて、第一次産業・自営業 9割
 勤め人は少数であった 生産の単位
 家庭は生産の単位
 子ども・父親・母親のもつ知恵や技を幼いうちから見せつけられている。
 自らの力の不足を体感。
 生活自体が子供を育てる。
○現在の家庭 消費の単位としての家庭
 大人も子供も同格  大人と子供の差がない
 家の手伝いない
 
※もはや家庭にすべてを求めるのは困難な時代になってきている。
 
○親の管理を強くすればするほど、子供たちは離れていく。
 
 
 <現在の子供たちの一般的な脳の活動レベル>
 子ども達の一般的な脳の活動レベル
       ○抑制型…まわりの強い監視の元で内側からブレーキを引く力が育ってない。
 
   聞き分けのいい子  親思い 優しい子
 
○人間としての発達をどんどん奪ってきた大人たち。
 
 
 
○子どもの「発達権」を保障するために
 
  ☆各種審議会・行政の変化の兆し
  ☆子どもを地域で育てよう
   ・学校・家庭以外に子どもの居場所を(学校的価値観の支配しない空間)
   ・子どもに豊かなナマ体験を(自然体験・文化体験)
     人と人、人と自然、人と物
  ☆「私の子ども」から「私たちの子ども」へ「斜交(はすかい)い」の社会を目指して
   ・ファミリー・サポートセンター
  ☆メディアリテラシーの確立を(メディアに対する接し方を考えさせていく)
  ☆子どものためのヘルプライン(チャイルドライン)…電話相談