本当に此処だけの話ですが、『古今著聞集』という本に、「ひぢの検校豊平善く鷹を飼ふ事」という説話があります。話の舞台は平安時代、一条天皇の御代の京。
天皇御秘蔵の鷹の中に、鷹司の人々にもどうにも手に負えぬ一羽の鷹があった。そこである日、この鷹を粟田口十禅師に辻につないで通りを行く人々の目に留まるようにしておいたところ、上り人の中に「なんと優れた鷹であろうことよ、云々」と独り言して通り過ぎるものがいた。鷹についていた鷹飼がその男に尋ねると、「この鷹は私にしか扱えないでしょう」と答えたのでした。そこで、その鷹を男に預け、その男に育てさせることにしました。
幾日かのち、天皇ご臨席のもと、紫宸殿南庭でその鷹を試したところ、見事に池の鯉を捕まえてきました。天皇はおおいにお褒めになり、信濃国ひぢの郡に屋敷と田園を与え、大番役に取り立てたということです。 |